ひとつ、屋根の下で



……瀬野くんて、実は結構面倒見がいいって、最近気付いた。


初めこそ、なんだこいつ!って思ったけれど、北岡さんのもとでアシスタントしてる姿は真剣そのものだし、スタッフさんの手伝いやモデルさんのお世話まで、すごくさりげなくこなしてる。


だから、あれ以上話をしていたら、もしかしてこの前みたいに駅まで送ってもらうようなことになりそうで、そんなの申し訳ないから、逃げた。


はぁ、と白い息を吐き出して、私は走っていた足を少しずつ緩め、ペースを落とした。



走ったせいで上がった呼吸がおさまっていくにつれて、少しずつ周りの静けさが気になってきて、思わず表情が固くなる。


まるで自分だけが世界に存在していると錯覚してしまいそうなほど、静まり返った住宅街。


それと同時に、その静寂と闇が連れてくる漠然とした恐怖。



駅まで走る体力があればそうするけど……。


「……はぁ」



私は小さくため息を吐いた。



走る気にはなれないけれど、早足で駅を目指した。