努めて静かな声を出したつもりだったけれど、声になってみれば焦燥がはっきり表れていた。


途切れ途切れにではあるが、彼女はこの前、変なヤツに写真を撮られたときに迎えにいった駅の近くの公園の名前を言った。



「今行くから、そこで待ってろ」



「凌」



「大丈夫だから」



何があったのかはわからない。


けれど、沙波の様子は普通じゃなかった。



あんなにもおびえきった声を、俺は聞いたことがない。



「……くそ……っ!」



ガンッ、と思わずドアを叩きつけるように開け放ち、俺は沙波のもとに向かうべく、家を飛び出したのだった。