ひとつ、屋根の下で


早く、戸倉のことなんて忘れろよ。


早く、次の恋を見つけようという気になるくらい、元気になれよ。


じゃなきゃ、俺だっていつまでたっても燻った想いを抱えたままにしておくことしかできない。



「好きだなんて言わないよ。俺は千依と付き合ってて、別れるつもりもないのに、沙波に本気の好きなんて言えるはずない」


「……本気の、好き、ね」


そうじゃない、好き、は今まで散々言ってきたんだろうな。


だから、沙波も離れられなかったんだろう。



……本当に、どこまでも罪な男だな。


だけど、これからは本気じゃない好きでさえ、言えないだろう。


戸倉の表情を見ていたら、そんな気がした。



「……分かってんならいい。話はそれだけだから。……ちゃんと、覚えておけよ。沙波のことを本気で好きだとしたって、お前が雨宮を裏切ってたってことも、沙波を傷付けてたことも変わらねぇんだぞ」



「わかってる。忘れないよ。そんなに沙波のことを気遣うなんて、……君は沙波のことが好きなんだね」



戸倉の言葉に、俺はふいっと顔を背けて、部屋のドアを開けた。



「……好きだけど、お前には関係ないだろ」