ひとつ、屋根の下で



「そこまで送ってくるね」


そう言って笑う沙波は、やはりどこかふっきれたような、すっきりした顔をしていた。



「わかった。……いや、やっぱちょっと待った」


「え?」



すでに部屋を出て階段を降りかけていた沙波が、振り返る。


俺は、沙波ではなく、彼女の前を歩いていた戸倉に視線を投げて、



「……ちょっと、話あんだけど」


と言うと、沙波と雨宮は驚いたような顔をした一方で、当の戸倉本人は動じた様子もなく頷くと、下りかけていた階段を再びのぼり、俺の前まで来る。


……きっと、鈍感なふりをして、大事なことは何も気づいていないようなふりをして。


このえらく顔の整った男は、俺がどうして呼びとめたのかも、分かっているのだろうと思った。