「でも……。
ここじゃあれなのはわかったけど、このへんゆっくり話せるような場所ないしねー」
閑静な住宅街。
コンビニやスーパーは多くても、カフェやファミレスのように気軽に入って話ができるところはほとんどなかった。
ふたりも、きっと学校からの帰り道だったんだろう、と冷静になった今ならわかる。
凌の家があるこの住宅街を抜けて、少し歩いたところに駅があるから。
「あ……、じゃあ家、くる?」
「へ」
千依と先輩の驚いたような視線が向けられて、苦笑する。
私はスッと前に右手を上げ、指差した。
道路を挟んだ、向こう側。
「私の下宿先、そこなんだ」
私の言葉に、千依と先輩が私の指差した先を見た。
そして、唖然としたように口が開く。
……そうだよね。こんな豪邸、そうないもんね。
驚くのも無理はない。
ていうか、驚かない方がびっくりだ。


