ひとつ、屋根の下で



「……ごめんね、急に泣いたりして」


「それはいいけど、……あんま心配させんな」


「……うん、ごめん」



ごしごしと目元を手の甲で擦る。


そうでもしないと、一向に涙は止まってくれそうになかったから。



「……せっかくの可愛い顔が台無し」



苦笑まじりにそう言った凌に、目元を擦っていた手首を掴まれてその仕草をやめさせられてしまった。


全然止まってくれない、って思ってたのに、現金な私の涙腺は、「可愛い」の言葉だけでピタッと涙をあふれさせることを止めていた。



「……それも、仕事のため?」


震える声で訊けば、凌は驚いたような顔をする。



「可愛い、なんて、思っても無いなら言わないで。……本気にしちゃうから」



この前、私に自信をくれたあの言葉も、凌にとっては仕事の一部だったのだろうかと思うと、ひどく胸が痛んだ。



「……んなわけねーだろ」


「え?」


呟くような言葉は周りの喧騒にかき消されて私の耳まで届かない。