駆け寄ってきてくれた声の主……、瀬野くんの姿を見て、私は思わずへなへなと地面に座り込んでしまう。
瀬野くんは私の肩に手を置いて、だけど視線は男が逃げた先を見据えていた。
「アイツ……、今ならまだ追いつけるかも」
「いい。やめて」
思わず顔を上げそう言うと、思った以上に泣きそうな声が出た。
「でも、犯人野放しじゃ怖いだろ?」
「いい。……今ひとりにされる方が怖い」
私の言葉に、瀬野くんは一瞬考えたようだったけど、小さく頷いた。
「わかった。……ほら、とりあえず立て」
ぶっきらぼうな口調だったけれど、そんな言葉とは裏腹に私の手を取って立ち上がらせてくれた瀬野くんの手は、すごく温かくて、優しかった。
「なんで瀬野くん、ここにいるの?」
ドクドクと、未だ恐怖の余韻に鳴り続けている心臓。
だけど、そんな恐怖を押しこめて、微かな声ではあったけれどなんとか声を押し出してそう訊く。
瀬野くんとは何度か撮影が一緒になったことがあるけど、彼が電車で通っているイメージはなかった。


