ひとつ、屋根の下で



撮影が行われているスタジオから家までは、電車で通っている。


スタジオから駅までも結構距離があるけれど、私は今日もひとり、もう日が落ちて暗くなった道を歩いていた。


本当はもっと早く帰れる予定だったんだけど、私のせいでかなり時間がおしてしまった。


見上げた空には、黒い夜空にぽっかりと穴を空けたかのようなまんまるの月が浮かんでいた。



賑やかな繁華街を抜け、人通りの少ない住宅地に入ると、先程までの喧騒がまるで別世界の出来事と錯覚してしまうほどの静寂に包まれる。


聞こえるのは、車や自転車が時々横を通り抜ける音。


そして周りの家々から微かに漏れてくる生活の音。


先程までは聞こえなかった自分の足音すら大きな音になって耳に届く。



「……?」



そんな住宅街に入って少しした頃、私は微かな違和感を覚えた。


気のせいかもしれない、と思うほどに微かな違和感。



……誰かが、ずっと後ろにいる気がする。



「……」



思わず、息をつめた。



本当に、気のせいかも。


私の足音に重なるようにして、もうひとつ足音が聞こえるなんて。


ただ、私と同じように駅に向かう人が歩いているだけかもしれない。