「あの……。あ、ありがとう。さっき」
「……は?」
瀬野くんは、私の言葉にぽかんとした表情を浮かべた。
意味が分からないとでも言いたげに。
「叱ってくれてありがとう。あのとき瀬野くんが喝入れてくれなかったら、本当に情けない結果になってたと思う」
「……別に、お前のために言ったんじゃねえよ」
「うん、それでも。ありがとう」
ぺこりと一度頭を下げ、私はくるりと方向転換をして瀬野くんとは反対方向に歩き出した。
うん。
ちゃんとお礼が言えて、すっきり。
「……あいつ、この前の忠告ちゃんと覚えてんのか……?」
瀬野くんが背後でひとり呟いていたそんな言葉が、私に届くことは無かった。


