ひとつ、屋根の下で



「もう、いいの?」


私は、滲んだ涙を指でこすりながら訊いた。


さっきまで、希美がすごく傷付くシーンでかなり希美に感情移入していたから、自然に涙が出てきていた。



「だって腹減ったじゃん。もう8時になるし、今日はこれでおわりにしてメシにしよーぜ」


そう言って、凌は立ち上がる。



……あれ、今日はハグ、ないんだ。



いつもは仕事を手伝った最後にしてくれるのに。


……って!!


してくれるって何!?


これじゃあまるで、私が凌がハグしてくれないの、残念がってるみたいじゃん。



「……今日は、ないんだ」



……まぁ事実、寂しがってるんだけど。



「ないって、何が?あ、もしかしてハグ?え、してほしいの?
……なんて、んなわけねーよな」



冗談冗談、なんて笑う凌。


いつもなら、「そんなわけないでしょ!」って言う私だけど、欲望に正直な私の心は、いつものそのセリフが、言えなかった。



「……」



黙ってしまった私に、凌は目をしばたたかせた。



「……えっ!?もしかして、ハグして欲しいの!?」



しばし迷って、私は俯きながらもゆっくり頷いた。