ひとつ、屋根の下で



凌の漫画の連載が始まってからというもの、以前にも増して凌の仕事を手伝うようになった。


凌の漫画のために登場人物になりきっている間だけは、沙波としての心の痛みを忘れることができて。


凌は、仕事のためと言って毎日抱きしめてくる。


だけど、それが仕事のためだけじゃないってことくらい、私にも分かった。


トキメキ補充、なんて軽口を叩きながら私の身体に回すその腕が、前とは全然、違ったから。




前とは比べ物にならないくらい、優しかったから。




好きでもない相手に抱きしめられるなんて、って思ってたけど、振りほどけるくらいの力で包んでくるその腕を払いのけようと思えないのは、私にとって凌のその腕が、温もりが、なにより安心を与えてくれるから。



千依を失って。


先輩を失って。



傷付くのも色あせた毎日を送るのも自業自得だって分かっている。


だけど、今まで当たり前だと思ってたものが簡単に壊れてしまうことを知ってしまってから、私は必要以上に誰かの温もりを求めるようになっていた。