ひとつ、屋根の下で



私は、思わず先輩のところに歩み寄って、その叩かれた頬にそっと触れていた。


微かに熱を帯びた肌に、自分の眉が寄ったのが分かる。



「……先輩の顔に傷付けたなんて、なんてお詫びしたらいいか」


そう言った声は、自分でも意外なくらい、泣きそうだった。


優しすぎる先輩は、きっとこの傷だって私のことを責める気なんて欠片もないんだろうけど。



「お詫びなんてしなくていい。俺が、沙波ちゃんが叩かれるなんて耐えられなかっただけだから」


先輩の言葉に、ギュッと胸がつまった。



「……かばってくれて、ありがとうございました」



なんとかそう言うと、なんだか気恥ずかしさが込み上げてきて、先輩の頬に触れていた手を離そうとした。


「っ!?」



だけど、その手首を急に強い力で掴まれ、びっくりして顔を上げる。



「……先、輩……?」


目に飛び込んできたのは、今まで見たことがないくらい強く、だけど揺らいだ視線。


先輩が戸惑ってる。


……そう思った。