ひとつ、屋根の下で



「いつも沙波ちゃんが一生懸命説得してくれたから。沙波ちゃんには全然関係ないはずなのにさ、いつも逃げずに相手と向き合ってたでしょ。

だから、俺も学んだ。曖昧で遠まわしな言葉だけじゃダメなんだって」


まぁ、そしたらぶたれちゃったけどね?


なんて笑う先輩に、私はハッとした。


そうだ。先輩、私をかばってさっきの強気美女さんに叩かれてたんだ…!


全然痛がる素振りを見せないから、すっかり忘れていた。



「先輩、さっきはごめんなさい……!私の言い方が悪かったから怒らせちゃったのに、先輩が叩かれることになっちゃって……」


「なんで沙波ちゃんが謝るの?俺が勝手に飛び出していっただけでしょ」



心底不思議そうに私を見る先輩。


ああ。


なんでこの人は、こんなに私の心を揺さぶるんだろう。


今なら、どうして先輩が上手く説得できていなかったのか、分かる。


流されやすいのもうっかり野郎なのも本当だけど。


……曖昧で遠まわしの言葉しか使おうとしなかったのは、先輩が優しすぎるからだ。


相手を傷つけないように、できるだけ、綺麗な思い出のままであるように。


そんなことを意識しすぎてるんだ。


……本当、呆れるくらいのお人好し。


先輩は流されやすいうっかり野郎である以上に、バカみたいに優しいんだ。