ひとつ、屋根の下で



「雅季……」


「ごめん。沙波ちゃんの言うとおりなんだ。もう、君とは会えない」


「だけど」


「俺より大事にしなきゃいけない人、いるだろ?」



先輩の言葉に、強気美女さんはぐっと何かをこらえるような顔で、眉間に苦し気に皺を刻んだ。



「嫌よ!!雅季が別れろっていうなら、私今の彼氏とは別れるから……!」


「ダメだってば」



先輩の声は決して威圧的ではなかったけれど、絶対に自分の気持ちを曲げない、という空気が伝わってくるような、芯のある声だった。



それからどれくらいの時間が経っただろう。


今まで、どうして自分でやらなかったんだろう、と思うほどに、先輩は丁寧に強気美女さんを説得した。


あれほど感情を昂ぶらせていた強気美女さんも、やがて涙を流しながらも納得して頷いてくれたようだった。