ひとつ、屋根の下で



「……昨日、雅季が家に泊まりに来たの」


「……うん」


嗚咽を抑えて必死に言葉を紡ぐ千依。


抑えようとしても言葉に微かにまざる嗚咽が、痛々しかった。



「……その時に、呼んだの。……沙波の、名前」



千依の、言葉に。


私は、何も言えなかった。



なんて言ったらいいのか、全然分からない。


息をするのが精一杯で、肝心の言葉は喉よりずっと奥で絡まってしまったようだった。


何も言わない私を置いて、千依はもう嗚咽を抑えることもせず、泣きじゃくりながら言葉を紡いでいた。



「信じられる?……愛し合って、最後にチューして。
ああ、幸せだなって、愛されてるんだって、思った、直後だよ?」


「……ち、い」


「私がどれだけショックだったか、沙波、わかる?」


これが全然知らない女の名前だったら、きっとこんなに傷付かなかった。


その千依の言葉が、グサリと胸を突いた。