「下宿って言ってもお母さんの友達のお家だし。他に下宿人なんていないよー?」


私がそう言うと、千依はあきらかにがっかりしたような顔になった。


そして、なーんだ、なんてつまらなさそう言うけど。


同じ屋根の下に同年代の男子がいるような家に、いくら自由奔放な私の母でも年頃の娘を預けたりしないと思う。


……うん、それくらいの常識はあると信じたい。




イケメンくんとドキドキのひとつ屋根の下!


……なんて、どこかの少女漫画やドラマの世界だよ。


「でも、沙波にも早く彼氏できればいいのに!

そしたらダブルデートしようね!」


授業の開始を告げるチャイムが鳴り、千依はそう言い残して前を向いた。


そんな千依の言葉に胸が痛むけど、落ち込んでなんかいられない。



この痛みも充分承知で、報われない恋をしているんだから。



「……」



お母さんの友人って、一体どんな人なんだろう。


仲良くできればいいな。