そしてそれは、ほんの一瞬のことだった。 ―――ちゅっ。 唇に柔らかい感触。 こ、これは・・・ 私が目を見開いて固まっていると、 「行ってきますの、ちゅー。僕と楓子ちゃんの日課だよ。それじゃあね!」 爽やかな笑顔とムスクの香りを残して、西山さんは今度こそ出掛けていった。 わ、私、キキキキ・・・キスされたぁぁぁ!!!! 「ファーストキスだったのにぃぃぃぃ!!!」 私の叫びは、虚しく玄関に響いたのだった。