紗英は少し考え込んだあと





「よし、行くか!」




と立ち上がった。





「あれ、伊織先輩は...」




「ほら、中庭に座ってる!



そうと決まれば行くよ。」



紗英はさっき反対していたとは思えないほどの力でわたしを引っ張る。




「い、いや、ちょっ。「すいませーーーん!」





すると下を向いていた彼が顔をあげた。




「...なに?」



彼の透き通った声がまたわたしの鼓膜を揺らす。



「ほら。」


紗英に押され彼の近くにたつ。




「どーし「あ、あの。




連絡先、お、おしえて、もらえませんか?」





緊張でカミカミになっているのがわかったのか 彼は鼻で笑ったあと「いーよ」と言った。




「え、いいんですか?」




「ん?いーよ?」




すると彼は携帯をだすとわたしの方に向けてきた。




どきどきどきどき。




「おい、伊織」




赤外線が終わると ちょうどのタイミングで彼の友達がきた。


慌てて携帯を隠す。




すると彼は体を伸ばしながら立つと





「今度は俺のこといじめないでねー。」




と笑顔で手をひらひらさせながら横を通り過ぎる。




それと同時に彼の香り...甘いバニラの匂いがわたしの鼻をくすぐった。