朝だ。カーテンを閉め忘れたらしい窓からは、レース越しに眩しい光が差し込んでいた。

なんだか身体がだるい。ものすごく疲れている気がする。夏バテか?いや、まだそんな時期じゃない。

昨日、何かしただろうか。午前中はいつもどおり授業を受けて、で、駅の近くに遊びに行って。

で、どうしたんだっけ。思い出せない。

なんだか頭が考えることを拒絶しているようだった。

思い出すのを諦めた俺は、腕を伸ばして、目覚まし時計をつかんだ。ぼんやりした頭で文字盤を見る。

"AM 08:46"


「やべえ!遅刻だ!」


目覚まし時計を投げ出し、バタバタと制服に着替え、家を飛び出した。





「やっぱ思い出せねえなあ」


1時間目にギリギリで間に合った俺は、なんとか授業を終えて屋上に来ていた。

思い出さなければいけないことがある気がするのだが、思い出せない。

なんだっけな。


ジリジリ暑いと思われている夏の屋上に来る人は少ない。今だって俺一人だ。

日陰なら陽の光も当たらないし、石造りの床もヒンヤリ冷たくて気持ちいい。風の強い今日なんかは、本当に快適だ。


さてと、ここなら誰にも邪魔されない。集中しよう。思い出すんだ。