俺は小さい頃から不幸が多い人生を送ってきた。

なんて、冒頭からこんな事を言ってしまうと、なんだか病んでいる人間のように思われるかもしれないが、別に俺はこの事で捻くれて鬱々と他人を呪っているようなヤツではないので安心してほしい(一時期そういう時期があったことは認めるが)。

この体質には16年間悩まされてきた。


はじまりは生まれてすぐのこと。

産湯につかり、タオルにくるまれた俺は、保育器のある部屋に運ばれるべく、搬送台に乗せられた。

そして、その数十秒後に落下することになる。

原因はネジのゆるんでいた搬送台の脚が折れるという、明らかな病院の管理不行き届きであったが、あと1分でも産まれるのが遅ければ、隣の分娩室の新生児がその台で運ばれていたというのでなんともいえない。


不幸な体質は、誰か家族を含む他人と会話、もしくは近くで過ごしたときにあらわれるらしい。

そして、俺が不幸に遇っている頃、俺と話した、もしくは一緒にいた相手は幸運に見舞われているようだった。


俺がトラックに撥ねられた日、友人はずっとなくしていた財布を見つけた。

俺が崖から落ちて死にそうになった日、母は5枚だけ買った宝くじがすべて当たった。


俺の不幸の度合いに比例して、その不幸の原因となった他人は幸運になっているようだった。

どんな不幸に見回れても、奇跡的に助かり(不幸なのか幸運なのかわからない)今のところ大きな怪我をしたことはないが、危険なことは確かだ。

身体を鍛えて、最近ではそこそこのことには動じなくなってきてはいるが、この先ずっと気を張り詰めて生きていくのは疲れるだろう。


この体質を改善できる方法はないのだろうか。


最近の俺の、そう急ぎでもない悩みである。