引きずり込まれた先は昨日と変わらぬ広々とした空間だった。

でも、調度品が昨日と違う気がする。昨日だって、あまり部屋を見ていたわけではないが、明らかに違う‥‥‥。この一晩で模様替えでもしたのだろうか。


「おい、なにボサッとしてる。さっそく仕事だ」


椅子の上にドッシリと腰かけている、凶悪そうな顔面の少年が言った。相変わらず、白くてふわふわの、顔に不似合いな耳をつけている。


「あの、仕事って何をすれば‥‥‥」

「ああ。まだ言ってなかったか?オマエにはボクのボディガードをしてもらいたい」

「ボディガード?」


必要か?

さっき腕を引っ張られたときの力強さといい、その圧迫感のある凶悪な顔付きといい、とてもボディガードがいるとは思えない。

だいたい、何から身を守るんだ。探偵事務所とは言っても流行っていなさそうだし。それでも、職業上いろいろあるのだろうか。


「オマエ、なかなか丈夫で強いと聞いてるよ」

「誰からそんな」

「こっちの情報通に、ちょっとな。それで、占い師の婆さんに名刺を渡しておいたんだ。引き受けてくれるよな?」


鋭い眼光を向けられる。なんだろうか。"拒否権など存在しない"、そんなオーラが伝わってくる。