この空の下で風は唄う

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大きなボトルに麦茶を作って、選手一人一人に配る。今は私と、一年生のマネージャーの2人。

「智花(ともか)ちゃん。記録用紙知らないかな?」

一年生のマネージャーの智花ちゃんに声をかけた。智花ちゃんは、元気がいいし野球もよく知ってる。そして顔も可愛い。

「あ、先輩さっきベンチの所に置きましたよ」
「あ、そうだったっけ」

今は、私がしっかりしなくちゃいけないのに。智花ちゃんの方がよっぽどしっかりしている。

(先輩として情けないなぁ)

「五十嵐先輩、肩調子いいですね」

「竜太くん?あ、そうみたいだね」

ピッチング練習をしてる竜太くんを見て、智花ちゃんが感心する。

「努力家ですよね、五十嵐先輩」

「ぅん、毎朝ジョギングしてるし。休みの日も練習してるみたい」

「……いいなぁ空先輩。幼なじみなんですよね」

「ぅん、でも私以外三人とも凄すぎて、私なんだか自信なくしちゃう……」

(って何私年下に相談してるのー!)

智花ちゃんがふふっと笑った。

「本当、天然ですね、空先輩」

「そんなつもりないんだけどなー……」

ため息をついて下を向くと、グラウンドにぽつぽつと水の染み。
不思議に思って、今度は上を向くと、雨雲が少しずつ広がって、雨が降り始めていた。

「降ってきちゃったね……。ひどくなったら練習止めなきゃ」

「そうですね。あんなに晴れてたのに」

智花ちゃんも空を見上げる。

やがて、雨は本降りになり、部員たちは道具をしまって校舎内に駆け込んだ。