床が軋む。

独特な静けさ。


ジリジリとした緊張感。


その場にいた誰もが、ただ一点を見つめていた。

2人の人物が、そこにいた。


体と頭には、重々しい光沢を放つ防具が。
そして手には、一本ずつ竹刀が握られている。

2人のうち、背の高いほうが、踏み込み、相手の頭上目掛けて竹刀を振り下ろした。
しかしそれを軽く避け、今度は背の低いほうが相手の銅に竹刀を打ちつけた。

パァンッ

床と、壁に音が反響する。

「一本!勝負あり!」

誰かの声が響き、それと同時にその場にいた者たちがざわめき立った。

「尾崎先輩かっこいい〜!!!」

女子の黄色い歓声。
それを向けられたのは、この勝負に勝利した、先ほどの背の低いほうの人物。

その人物が、ゆっくりと防具を外す。

茶色がかった髪に、肩の辺りで少し癖がついた髪。そして何よりも端正な顔立ちで、落ち着いた表情をしているのが印象的な、少し中性的な外見の少女。

尾崎 風(おざき ふう)。
双子の姉である彼女は、中学校の二年生になっていた。