約束の日。私たちは、青気桜通りへ向かった。久しぶりに会った恭也になつかしさを感じた。
満開の桜の下、私たちは歩いた。
以前のように手をつなぐことも、笑顔で会話することもなかった。

恭也は、ずっと携帯の画面を見ていた。
先輩? 聞きたかったけど聞けなかった。

私たちは、並んで歩いていたはずなのに。いつから恭也は、あんなに遠くへ行ってしまったのだろう。いつから、離れた世界でバラバラになってしまっていたのだろう。



先輩と付き合ってるって聞いたんだけど、嘘だよね?恭也の彼女は、今も私だよね?ほんとうは、私のことどう思ってるの?



今日は、聞かなきゃ。いつまでも逃げていられない。

頭では、分かっていてもだめだった。



別れよう、そう言われるのが怖かった。




ピロリロリン。
恭也の携帯がなる。
恭也が開いた携帯の待ち受けを見て私の中の希望という名の光が消え去った。
心は、闇におおわれた。
恭也の携帯の待ち受けは、友達ととったであろうプリクラだった。
私が恭也に告白したあの日、私たちは記念にと桜の木を撮り一緒に待ち受けにした。
「南、大好きだよ。桜は、俺たちにとって大事なものだからな!忘れんなよ?
春祭り、来年も再来年も何年たっても一緒に行こうな!」
そう言ってくれた恭也。
静かに散っていくあの約束。



モウダメダ。モウムリダ。




「ごめん、ごめん、」
電話が終わったのか恭也が歩き出した。私はもうその背中は追いかけない。
「別れよう。」
涙と共にこぼれ落ちた言葉。