携帯の着信音で私は我にかえる。また、あいつのことを考えていた自分に気づきため息がもれる。
着信音のなり続ける携帯に気づきあわてて手に取る。ディスプレイを見ると、カタカナで「ユウ」の文字。半年程前から付き合ってる私の彼氏。
「もしもし?」
慌てていたせいか、声がうわずってしまう。
「もしもし、南?俺だけど今から外出られる?」
そこには、いつもの優の声があった。優のことを知っていくほど、私はどんどん優を好きになっていった。そんな自分が好きだったし、安心を得られる唯一の時でもあった。
「うん。大丈夫だけど、どうして?」
私は安心を感じながら言った。
「あぁ、実はさ青気桜通りで、今日春祭りがあるんだって。ちょうど桜もちょうどいい感じに咲いてるし。それにテストでしばらく会えなかっただろ?だから....…」
サクラ、その言葉で、私の安心はいっきに崩れる。優の言葉はもう私には届かない。
