精神的なこととは母親になる準備や心構えがどれだけあるのかということです。』
なるほどと思った。
読み進めていけばいくほど心の縛りがほどけていくようだった。
ただこの元助産師のおばあさんは薬に頼らず自然体でいることをポリシーとしていた。
小夏はそのおばあさんに相談したくなり電話をかけてみた。
「もしもし」
普通の自宅用だったようで、想像したような気品のあるゆったりとした声が受話器から聞こえてきた。
小夏は自分のした行動に今さらながら恥ずかしさを感じたものの丁寧に話はじめた。
「あの私金井と言いますが、ナチュラルベイビーのホームページを拝見しまして是非相談したくて電話をかけてみたのですが」
しばらく間のあった後に
「はいはい、電話でも会ってでもどちらでもいいわよ。どのような相談かしら」
予約をとられるのか有料なのかと思ったがそんな心配は取り越し苦労だったようだ。
小夏は今までの不安を一気に吐き出した。
「あらあら随分とひとりで頑張って来たのね。でもそんなに頑張らなくてもいいの。こうだからこうしなきゃいけないなんて決まりはないのよ。もう力を入れて頑張らなくてもいいの。」
心のなかのうず高く積み上げられた氷山が溶けていくかのように安心した。
こぼれ日のような話し方でおばあさんは温かく話を続けた。
「そうね、まず部屋のなかを綺麗に掃除して清潔を心がけること。潔癖になる事ではないしそれにこだわることでもないの。もし自分が子供だったら家はある程度きれいな部屋の方が気持ちいいでしょう?そういうお母さんになれる準備をするの。わかっていただけるかしら?」



