小夏は結婚して1年が過ぎようとしていた。
30歳ということもあって子供を早く欲しいと思い排卵検査薬や基礎体温をつけ普段は外で働いていた。
小夏は手帳のカレンダーに本日生理が来たことを記した。
すると携帯の着信メロディが部屋中に鳴り響いた。画面を開くと友人の優子からだった。
「久しぶり元気だった?」電話の向こうから聞き覚えのある元気な声と子供のうるさく騒ぐ声も聞こえてきた。 優子は短大時代の友人で卒業後すぐに出来ちゃった婚をしてしまった。
「うん。元気だったよ」少しだけ間の悪さを感じながら小夏は平静を装った。
「どお?結婚生活は幸せでしょう?」何も知らない無邪気で明るい声が聞こえてくる。実に優子らしい。
「どおって普通だよ」
近況報告が終わると優子の声のトーンが変わった。
「実は私3人目欲しいんだけどなかなか出来なくてね」
「そうだったの…」
「ほらうちは2人とも男の子でしょう?だから女の子欲しくて産婦人科に通っているんだけど全然妊娠しないんだあ」
その後一時間ほど優子の話を聞いて電話を切ったが、自分も妊娠しなくてとはなぜか言えなかった。



