my existence sense-神が人を愛す時-

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ジーザスと可哀想な衛兵達を残し一人自室の途へとつくバロン。

カツンッ。
長い廊下に規則正しく靴音が響く。











「そもそも僕はあまり乗り気では無いんです........いいえ、反対ではないんですよ?
ただ神殺し.......やはりそう言われれば誰しも抵抗感を抱きます」



カツンッ。



「確かに僕も平穏な世界であることを望んでいますし、キルファさんが言うことも判らない訳でもありません。
けれど規模が大きすぎるんです」



カツンッ。




「やはり人の上に立つような人は器が大きいと言うか考えることが大胆と言うか。
そういうものが今の僕にはまだ足りないんですかね」



カツンッ。




「..........あぁあ、僕もまだまだ駄目ですね。
こうやって一度腹に決めたはずのことをグダグダと。
僕の悪い癖です」




規則正しい靴音を背景にブツブツと長い独り言が廊下に響く。

幸い兵や侍女達は今日というこの忙しい日に出払っているようで擦れ違わないが、もし擦れ違れば危ない人だと敬遠されそうなものである。




カツンッ。

長い廊下。
その突き当たりは左右に別れる曲がり角になっている。

そこを右に曲がると兵達の宿舎、そして左に曲がった先が将軍やそれに比する者達の部屋となっていた。
一介の兵達は一つの部屋に五人六人といった風に多人数共同部屋になっているが、将軍には一人一人個室が与えられていて無論将軍であるバロンも自分の部屋をこの城に持っていた。




カツンッ、ッ。

廊下の突き当たり。
バロンは考え事を頭一杯に巡らせたままいつも通り自室に向かって踵を翻す。









――――ドスンッ。






「っ!」



曲がった瞬間に思いがけず何かと出会い頭にぶつかった。

しまった。
すっかり余所見をしてしまっていた。

..........。
だが誰かにぶつかったにしては衝撃が少ない。
全身ではなく膝くらい、随分下の方への衝撃。









「...............子供?」



衝撃のあった場所に視線を下げれば、そこには女の子が一人居た。



鶯色の綺麗な髪を可愛らしくお下げにした、歳は十を越すか越さないかくらいの女の子。
見たことの無い子だった。

そもそもこの場所自体、このような子供が出入りするような場所ではなくて此処に子供が居ること自体異様なことである。









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