my existence sense-神が人を愛す時-










ッ。
トントンッ。




「.........、バロンです。
ジーザスを連れてきました」



タラタラとしたペースを崩さぬまま廊下を行き辿り着く大きな扉の前。

その前には数人の衛兵が立っていて、やってきた二人の姿にバッと姿勢を正し敬礼をする。
そんな衛兵に穏やかな紳士的な笑みで小さくご苦労と労ってやり此処の警備はもういいと人払いをし、バロンは目の前の大きな扉を叩いて言う。







「あぁ、御苦労様!
二人とも入っていいよ」



中からはまるで王らしくないキルファの声。





「おー、じゃあ入るぞー」


「失礼します」



ギイィッ。
一応王への謁見ということなのに、このような軽々しい感じで良いのだろうか。






「やぁ、わざわざ呼びに行ってもらって悪かったね?」



「いえ、構いませんよ」



「そうそう♪
どうせバロンなんだからどんどん扱き使えって♪」



「......貴方に言われると無性に腹が立ちますね」




王らしくない王に適当無責任な上司。
この三人の中では一番の苦労人は無論バロンである。









「ゴホンッ。それで、キルファさん。
お話というのは、一体何でしょう?」



苦労人バロンはこのままずるずると会話を続ければまた話が脱線していつまで経っても本題に入らないことを先読みして早々に本題を二人に振る。

もう慣れたもの。
実に懸命なその判断のお陰でキルファはハッとしたように口を開く。







「あ!そうだったね!
僕は君達に大切な話があって呼んだんだ!」



無垢な笑み。
その笑みを前にすれば普通、その大切な話とやらの内容は穏やかで平和なものであると誰もが察する。

ッ。
だが何故かまたその笑みに寒気が走る。






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