彼女を守りたい。
彼女を愛している。
だがそれは決して許されぬ感情。
同じ神という名を持っていても彼女と彼等とでは決定的に違う。
女神はそもそも世界を創ったと云われる偉大なる存在。
云わば本物の神。
正真正銘、神の中の神。
そして五神はその女神が創造したはず世界に生きる彼女が創造したはずの"人"のその末裔。
女神に力を与えられ神となった者達。
女神は人にとって母なる存在。
五神である彼等にとっても然り。
かつては人であった彼等にとっても彼女―――創世の女神ノウェリスは母なる存在なのである。
敬う気持ちはあっても、決してそれが愛であってはいけないのだ。
「..........そうか、判ったよ。
君達人が祈り願ったりするから、ノウェリス様が苦しむんだね」
エルドレの彼女への想いはみるみるうちに姿を変えて、やがて彼女に祈りを捧げる人々への恨みや憎しみになる。
彼は愛すべき人という存在を、彼女への愛のあまり憎く思うようになっていた。
憎しみは醜く黒くそして他を染めやすい。
彼の純粋さは愛より芽生えた憎しみに染め上げられ狂気に走っていった。
ゴオォオ.....ッ。
世界に鳴り響く轟音と共に聞こえたのは人々の悲鳴。
女神への愛から姿を変えたエルドレの狂気が、ついに一線を越えて人々を襲う。
エルドレが、神が人に牙を剥いた。
彼は自分の事を厚く信仰する一部の信仰者を従え、人への攻撃を始める。
女神を信仰し彼女に祈りを捧げる者達を、世界の多くの人間を彼は"自分の愛する人を傷付ける敵"と見做した。
多くの人が傷付き命を落とし、平和が保たれていた世界は一瞬にして廃れ荒んだ。
二度目の世紀末が訪れた。
..........。
エルドレを止めなければ。
荒み混沌に堕ちる世界を前に残された神は決断を下さずには得なかった。
彼を、エルドレを殺すしか無い。
苦渋の決断。
だが世界を守るのが神の使命......その使命を果たすためにはそれが最善の決断だった。
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