女神は彼等の気持ちを受け入れて共に神として生きていくことを決めた。
そして彼等に自らの力を分け与える。
今度は偶然によって持ち得た力では無く、直々に女神から分け与えられた力。
今までのものとはその力も質も明らかに違った。
彼等は女神と共にそれぞれ神としての役目を果たし、それぞれに人々から敬われる。
世界の信仰は女神だけへのものでは無くなった。
人々の神への崇拝は止まない。
そして自らが神として敬われる立場となってからも、五人の抱く女神への崇拝と敬愛の念は変わらなかった。
「ノウェリス様。
貴方がこの世界の女神様で、僕は本当によかったと思っています。
貴方じゃなければきっとこの世界はこんなに美しいものじゃなかったはずです.......貴方は本当の女神様です。
僕等のように力を与えられただけの紛い物ではなくて、唯一天性の神です!」
五人の神。
中でもエルドレの彼女への敬愛は飛び抜けて厚かった。
彼は神でありながら女神ノウェリスの最大の信者。
彼は非常に純粋でノウェリスを心から敬っていた。
........。
その純粋さは微笑ましかった。
だが、他の四人の神はそんな彼に危うさも感じた。
ノウェリス様。
そう言い寄る彼から感じるのは勿論底知れぬ"敬愛"の念。
........。
だがその"敬愛"はあまりに厚く、いつかそれが敬いを通り越した感情へと変わってしまうことを恐れた。
"敬愛"が"愛"へと変わってしまうことを恐れた。
微笑ましさと不安。
その両方を抱えたまま世界には何事無く時が流れ、人は神への崇拝の意を引き継ぎながら世代を受け継いでいった。
女神と五神。
彼等に守られたその幾千の時は平和だった。
彼等が居る限り彼等の御陰で平和は続いていく。
誰もがそう思っていた。
..........。
なのに平和な日々は打ち砕かれる。
世紀末を迎え世界が女神の手を離れて一人歩きを始めてから幾千年、訪れてしまったのは二度目の世紀末。
その世紀末は誰もが思いも寄らぬ、世界と人を加護してきたはずの神により引き起こされた。
そう。
四人の神がエルドレに抱いていた不安が現実となったのである。
「貴方を苦しめる者は誰一人として僕が許さないよ」
一途で純粋であるが故に敬愛が独占的な歪んだ愛へと姿を変える。
女神であるノウェリスの縋られ祈りを捧げられそれに応えねばならぬと心を擦り減らす終わりの無い日々。
五神という存在が生まれたことにより少しは彼女の負担は減りはしたが、それでも背負うには重すぎる女神としての使命。
エルドレはそれを常に彼女の近くで感じていた。
自らも人に縋り祈られる立場ではあれども、常にそんな彼女に心を痛めていた。
神として人に注ぐべき彼の目には、いつの間にかノウェリスしか映さなくなっていた。
.

