私は、顔を上げられなかった。 だから波留がどんな顔をしているのかは、私には分からなかった。 見えたのは、波留と私の手の左薬指。 銀色に輝るリング。 「桜…。」 そう私の名前を呼ぶ、私の大好きな人の声は、震えていた。 「波留…。」 そういう私の声も、いまにも泣き出しそうな声だった。