龍二は何も答えずに、ベッドの脇からビール缶を取って開けると、一息に飲み干した。

 ヤバい、と苺は本能で感じる。




「俺が、どれだけ心配したかわかってるんだろうな?」




 既に一人称が「僕」から「俺」に代わっていた。




「え?」


「朝起きたら、どこにも苺がいないし、誰も苺の行方なんか知らないし、メールしても電話しても応答しないし、他に連絡手段なんかないし!どれだけ心配してたか、わかるのかよ!?」



 龍二の言葉に、苺は唖然にとられた。



「そ、そんなことで…?」


「そんなことだと!?俺にとっては、重要なことなんだぞ!もしかしたら苺が、俺に飽きて家出したのかもとか、誘拐されたのかもとか、真澄にとられたのかもとか、すごく心配してたんだぞ!?」



 怒鳴りながら、龍二が苺をそっと抱きしめる。