「……どうにか、なんねーのか」

「ならないよ」

「……くそっ……」




信吾と過ごしてきた日々が、頭の中に甦る。

4月に出会って、すぐ仲良くなって……『親友』だと思っていた信吾が、青森へ行ってしまう。


どうにもならないってわかっているのに、どうにかしたいと思って、道を探してる。


龍輝や朔也、大雅……みんなとの仲は、もちろん良好だけど。
でもこんなにも信頼し合える奴は、信吾だけなんだ。

高校3年間はもちろん、卒業したあとだって、ずっとずっとそばに居られると思っていたのに……。




「なぁ健吾。 離れていてもさ、いつでもメール出来るじゃん?
お互いの生活のこととか、色々話せるのは楽しいと思うよ? ……って、遠恋中のカップルみたいだな」

「……」

「まぁとにかく、俺は俺の道を行って、お前はお前の道を行く。
出会いがあれば別れもある。 人生ってのはそういうもんだろ?」




ニコッと笑う顔は、すべてを受け入れて、決意したもの。 そんな風に見えた。




「これ、俺の1番大事な本だから、健吾も大事にしてくれたら嬉しい」

「……ん」

「じゃ、元気でな」




本をがっしりと握らせたあと、信吾は振り返ることなく去っていった。