私は疲弊していたのかもしれない。

誰でもいいから、私を見てほしかったのかもしれない。


それが愛でも恋でもなくていいから。



「俺、もう疲れたよ」


晃は顔を覆い、肩を震わせる。


どうせ美冬から憎まれているのなら、今更どうってことはない。

何より、初めから私のものである晃を取り戻して、文句を言われる筋合いはない。



「晃……」


手を差し伸べようとした時だった。

晃のズボンのポケットから、ピリリリリ、と着信音が鳴った。


嫌に長いそれ。


ためらった晃だが、しぶしぶ携帯を取り出し、ディスプレイを見て、顔色を変える。

カシャン、と晃の手から落ちたものの画面には、




【着信:ナツ】



突風が吹いた。

冷たい、冷たい、冬風が。



「……俺は、何を……」


何をやっていたんだろう、私たちは。

自分自身の行動に身震いする。


晃は膝から崩れ落ちた。



「ごめん。俺、晴香のこと利用しようとしてた」

「………」

「美冬に真実を聞く勇気さえなかったから、晴香に逃げようとした」