「晴香ー。これ間違ってるぞー」

「4じゃなくて3だろ。これだから馬鹿は」


人の宿題を写させてもらっている分際で、偉そうなふたり。



「だったら写さなくていいじゃん! っていうか、晴香に向かって『馬鹿』とかありえなくない?!」


でもいつも、私が怒るより先に怒ってくれる美冬。

だからなのだろう、私はすぐに怒りが消えて笑ってしまう。



「ちょっと、晴香! あんた今、馬鹿にされたんだよ! 何笑ってんのよ!」

「だって、美冬の怒った顔、おもしろいから」

「はぁ?!」


『おっとりしてる』かどうかは、自分ではよくわからない。

けど、早口な美冬の隣にいると、そうなのかなぁ、と思ったりもして。


まぁ、だからどうしたということもないけれど。



「晴香! 聞いてんの?!」

「え? あ、ごめん。何だっけ?」

「……あんたねぇ」


こめかみを押さえた美冬を見て、私はまた笑った。

それが私のためであることはわかっているから。



「私、美冬のこと大好きだなぁ、って」

「いきなり、何? っていうか、今そんな話してないじゃない」

「うん。でも、私は美冬のこと大好きなの。ナツも、晃も、大切な友達だし」

「いや、だからさぁ」


美冬は何か言いたげだったが、でも言うのを諦めたのか、「そうだね」と、返事にならない言葉を返して肩を落とした。



この学校にきて、このクラスにいられて、最高の友達に囲まれて。

私は、これ以上の幸せはないんじゃないかと思う。


ずっと、ずっと、このままでいられれば、と。