君の声を聞きたくて

あたしは、もういないのにまた一つ期待をしていた。

あたしがいなくなってから、田中はあたしのために泣いてくれたのかな?

あたしがいなくなって、田中は悲しいと思ってくれたのかな?

思ってくれればいいな―――


「…小柳!!小柳…!」


呼ぶ声が大きくなる。
幻聴が聞こえるなんてあたし…

あたしは…

あたしはどれだけ……


――――田中の事が好きだったんだろう?



あたしは悲しくなって手で顔を覆う。

もっと一緒にいたかった。

切ないよ、もうとどかないなんて。
もっと田中と………田中に、ありがとうって言いたかったよ。


次にあたしが目にしたのは真っ白な、
けどところどころ薄い汚れのあつ天井だった。
寝転がっているあたしの体は重くて、動かせなかった。
あたしはしょうがなく首だけ横に向けた。
目を赤くしたあいつは唖然としている。
そして、あたしは思わず笑顔を綻ばせる。

あいつは、朝教室で見せるような笑顔じゃなくて、
今まで見せた事のないような笑顔。




「すっげぇー待ってた。」





あたしは、嬉しさで作られた宝石を目から流す。



      また、君の声が聞けてよかった。