明美との言い合いになった。
店からの帰り道。
色んな思いが頭をよぎる。
そして、階段の一歩一歩をふみしめながら
今にも流れそうな涙を流さないよう下唇をかむ。
前から、5,6人の子供が騒ぎながら駆けてくる。
真っ赤になった顔を見られてしまいそうだから下を向いたまま歩いた。



ほんの一瞬だった。



下を向いたまま歩いてたあたしがわるい。
けど、涙を見られなくなかったからしょうがないの。
目の前に空が来た。

【小柳ー、宿題したー?】

【わりぃ、溝口!】

【お前も!何で、小柳と仲良くするんだよ!?】

【小柳…。】

頭の中をたくさんの声が走ってゆく。
これは・・・。
あたしの手から鞄が離れる。

「あっ。」

一言、声に出したと思ったらあたしの体が冷たい階段を転がっていく。
目が回る。
あたしの体はアスファルトに叩き落された。
色んな声がまわりから聞える。

あたし・・・このまま死んじゃうのかな?

まだ、明美と仲直りしてないのに。

お父さんとお母さんとおにいちゃんにありがとうって伝えてないのに。

まだ、田中に好きって言ってない。

色んな想いと色んな人が頭をよぎる。
そして、目にためていた涙があたしの頬を伝ってアスファルトへ流れた。



誰かが、あたしの手を握った気がした。

けど、それも気のせいなんだ。


だって、あたしはもう―――…。