「しかも、結構噂になってるよ?」

『けど、付き合ってな――――。』

「この前、溝口、梨華の頭なでてたじゃん!?」

『あれは―――』

「言い訳ばっかりやめてよ!なんで?あたし言ったよね?溝口の事!!」

『ねぇ、明美、聞いて―――』

「裏切ったの!!!!」

その言葉は、あたしに聞いてると言うよりあたしに言い聞かせているようだった。
その一言には色んな意味が含まれていたみたいだった。

【友達でしょ?】

【田中は?】

【嘘だって言って!】

【梨華、あたし何を信じればいいの?】

明美の声が店内に響き渡り、周りの人の視線は一気にあたし達に集まる。
けど、あたしは明美しか見えない。
相当興奮している明美に、あたしは少し怖ささえ感じた。
明美の目にたまった涙が一滴頬に伝った。
そして、明美は立ち上がりその場から逃げるようにでていった。
けど、あたしは明美が小さく声にならない声で

「ごめん」

と、いったのを聞き逃さなかった。