どこかで声がする。
けど、すぐ気のせいなんだと思い込んだ。
待ち合わせ場所に着くと、明美はすでに座っていて
なにやら深刻そうな顔をしていた。
『明美!』
あたしが呼ぶと、明美はハッとしてこっちに顔を向けた。
どうしたの?と、言いながらあたしは明美の前に座った。
そして、明美は水滴のいっぱいついたガラスのコップを見つめ、
決心したように口を開いた。
「梨華って田中の事好きなんだよね?」
急な質問に驚いた。
けど、明美の目は真剣そのものであたしは下唇を噛み、考える。
そして、曖昧に『まぁ…好きかな?』と返事をした。
「溝口君をは付き合ってないの?」
あたしはきょとんとした。
たった今、あたしは田中の事を好きといったのに、と。
そして、頭の中に一つの疑問が浮かぶ。
【なんであたしが溝口君と?】
『何それー?ないよー!!』
「けど、田中が言ってたよ!」
あたしは言葉を失った。
何で田中はそう想ってるの?
っていうか、田中は…勘違い?
説明できないような複雑な思いで顔を曇らせる。
