休み時間、お手洗いに向かう途中の非常階段から声が聞えた。
丁度一人だったあたしは、こっそりとのぞいてみた。
え…田中!?…と溝口君!

「別にー。」

田中が適当に返事をした。
え、坂口って明美!?
話が話しなだけに、思わず耳を傾けてしまう。

「なんだ、それ?俺が、坂口の事好きなの知ってるだろ?」

「俺は別に好きじゃねぇよ。」

「お前は、小柳が好きなんじゃねぇの?」

え、嘘!?
田中が…あたし?
じゃぁ、柿沼さんは?

「けど、俺彼女いるし。」

「お前さ、んじゃぁ何で坂口と――――。」

「お前も!!何、小柳と仲良くしてんだよ。」

田中はそういうとこっちへ来た。
あたしは慌てて小さくしゃがむ。
田中はあたしに気付かず教室へ足早に戻っていった。
「んだよっ。」溝口君はそう言い、その場にしゃがんだ。
あたしは切なくなった。
―――何でこんなに切ないんだろう?
田中の気持ちを知って嬉しいはずなのに。
なんで、あたし達の糸はこんなに絡まってしまったんだろう。
泣きたくても泣けない溝口君の姿を見つめる。
それぞれの想いは通じ合ったはずなのに、なんでこんなに悲しいんだろう。


ねぇ、神様…

あたし達、何を間違えてしまったんですか?


あたし達…ただ、恋をしただけなのに―――