君の声を聞きたくて

 休憩時間、あたしと溝口クンはほぼ同時に明美、田中の席へと
向かっていった。
苦笑気味にお互い会話を交わす。


「ごめんねー、梨華!」


「わりぃっ、溝口!!!」


田中の声を聞いて、心の中で思う。
え?田中が言い出したの?――――


休憩時間の後から、まともに田中と話せない。
銃後柚中、一番後ろの席に座るあたしは田中の横顔がよく見える。

明美と仲よさそうに話してるなとか。

笑った顔がかわいいなとか。

あ…、寝てるじゃんあいつ…とか。

観察日記が書けそうなほどだ。
「田中観察日記」
ひねりのないタイトルに思わず顔がにやける。
な、何考えてるんだあたしは!!
変態みたいじゃん!


「なぁ、小柳ってさ田中の事好き?」

『…はい?ないよーそれ。』


内心、どうしてばれてるんだという気持ちでいっぱいだが、
とりあえずさらっと返事をした。


「えぇ?嘘、絶対好きやろ?」

『どっちでもいいじゃん。』


冷たい態度なあたし。
あたしの態度に少し驚き気味の溝口君。
そして彼は、すこしがっかりした顔をした。