薄暗い部屋の中、円形に並べられた机に座るのは10人の男女。


ポツポツと空席が目立つ中、noir papillonのギルド長カナメの姿が其処にはあった。




 「説明して貰おうか、稲葉 要。あの場で何が起きたのか」


 「…説明して貰いたいのはこっちも同じなんだけどなぁ……」


 「何か言ったか?」


 「否何も」


Aランク、トップクラスのギルド長である男に対してもこの態度。


退屈そうなカナメは顔をひきつらせる男を頬杖をつきながら眺めていた。




 「信じられないんだよ。何故君のギルドの者のみが生き残っているのかが」


彼はミヤビの事について言っているようだ。


要するに、自分達上級ギルドに所属する者が助からなかったのに、何故低級、最弱ギルドの者が助かったのか。

その訳が、理由が理解できないという。




 「おい聴いてるのか稲葉 要!」


机を叩き突然怒鳴りだした男。

というのも、呑気に欠伸をしているカナメの姿を目にしたのだ、仕方ないだろう。




 「まぁまぁ、落ち着いて下さいな殿方。怒鳴っても何の解決も導きはしませんわ」


男に声をかけるのは穏やか物言いの女。


優しい眼差しをカナメへと向ける彼女もまた、男とは異なるAランクギルドのギルド長である。




 「さぁさぁ、紅茶でも飲んで気を休めましょう。気持ちの整理ができたら彼もきっと、自ら口を開いてくれる筈ですから」


全員の前に出現したのは入れ立ての紅茶。


それを見下ろすカナメは鼻で笑いながらフッと息を吹きかけ紅茶を蒸発させ水蒸気へと変えるのだった。