「bienvenue!」
扉が開き響く柔らかな声。
1人の女性がにこやかに振り返る。
此処は『soleil』と言う小さな喫茶店。
二階に要の仕切るギルドが併設されている為、遙翔達3人の姿は其処に集まった。
窓際の席に座る遙翔は食べかけのサラダをフォークでつつく。
「あれ?新人くん、口に合わなかったかな?」
飲み物を運んできた桜色の髪の女性。
様子を気にかける彼女は櫻嵐 珠里奈(オウランジュリナ)。
この喫茶店のオーナーである。
「否、口に合わない訳じゃ……」
正直味は最高だ。
一流と言っていい程に。
だが、この量はおかしいだろ。
机の上に並べらない程広がる料理の数々。
ギルドに入ったお祝いだと、珠里奈は様々な料理を次々と運んでくる。
それも全て山盛りで。
有り難いのだが、1人ではとうてい無理なこの料理の品々。
向かいの席に座る要とリッカに助けを求めるが、他人事のように2人は食後のパフェを食べていた。
「折角のご馳走を残すなんて失礼なのだ」
「そうだ遙翔くん。こんなに美味しそうな料理を台無しにすると罰が当たるぞ」
だったらお前達も食え!
てか食べろ!
否、食べて下さい。
遠慮なんていらないさ。
そんなもの必要無い。
この料理が減るのなら、頭だって下げてやる!
パスタを頬張る遙翔はやけくそになりながら思うのだった。

