「突然お邪魔して申し訳ありませんでした。」
少女は再び袖頭巾で顔を覆った。
「いえ、とんでもない…。」
少女はワラジを履くと、改めて八雲に深々と頭を下げた。
「あの…。」
…少女が玄関の引き戸を開けたとき、八雲は去り際の少女に声をかけた。
「…お嬢さん、これだけは肝に銘じてください。
…お姉様は決して、いや、絶対にあなたを恨んでなどいない…。
私はそう確信しています。…むしろ感謝していると…私は思うのです。
ですから自分を責めすぎず、ご自愛し…
自らの生きていく道をしっかり見つけて、明るく生きていってください。」
「…はい。優しいお言葉、心より感謝いたします。」
少女は顔を上げ、うっすら微笑んだ。
空は太陽に代わり、星が輝きつつあった。
真夏の暑い日和だったが、夕暮れも過ぎると涼しげで穏やかな、澄んだ空気が流れていた。
闇に吸い込まれそうな乾ききった道を…少女は早足で歩いていく。
八雲は彼女の後ろ姿を見送った。
とろけそうな夕闇。
それは歩みを止めようとしない一人の少女を、容赦なく包みこんでいった…。


