プルルルル…
発車ベルが鳴った。
(え?まずい!汽車でちゃうじゃん!)
おきぬは階段をかけおりる。
『お待たせいたしました。まもなく一番線から米原、大津方面、京都行き普通列車が発車いたします。ベルが鳴り終わりますと…』
(よし!間に合う!)
おきぬがドアに駆け込もうとしたその時、グイッと手をひかれた。
「うわったったったっ…」
おきぬはよろつきこけそうになった。
その様子を見ていた初老の駅員は怪訝な顔をしておきぬを見つめた。
「あの…乗ります?」
「あ、はい。乗り…」
「ません!」
後ろで葛西が叫んだ。
駅員は客扱い終了の青い旗を振り上げた。
列車はドアが閉まり発車した。
「あー、あー、あ~。」
おきぬは指を加えてホームを抜ける列車を恨めしげに見つめていた。
振り返りおきぬは葛西をにらんだ。
「ちょ…ちょっとあんた!なんてことすんのよ!」
「乗っちゃダメでしょ!あれは!」
葛西も負けじと叫ぶ。
オレンジに緑色のツートンカラーのその列車は
広い大垣駅の構内を車輪を軋ませ、ゆるゆると抜けていった…。
「あー、行っちゃったじゃないのよぉ。どーしてくれんのよぉ。」
おきぬは頭を抱えた。
「あはは。仲いいねえ。
ダメよー。喧嘩は。仲良くせにゃあ。」
初老の駅員は二人を見て笑った。
「え、ち、違いますよ!そんなんじゃ…。」
葛西は手を振って否定する。
「ええねー。若いってのは。
…まあ喧嘩するほど仲がいいっていうしねぇ、
うらやましい限りだわぁ。あっはっは…」
「だ、だから違いますってば!」
葛西の顔はみるみる赤くなっていく。
おきぬはそんな彼を首を傾げて見つめていた…。


