大垣駅前のとある雑居ビル。
そこに協会は在居していた。


おきぬは社内にあるファックス用紙を見た。


「至急レンラクサレタシ。ギフシブチョウミノヤナギオキヌドノ。東京支部長
ヤマダツバキ」

その用紙を見ておきぬは笑った。
「全く椿ったら…。ファックスなんだから普通に用事書けばいいのにねぇ。」

おきぬはクスクス笑うと受話器をもち東京支部に電話をかける。


『お電話ありがとうございます。ユキンコ協会東京支部です。山田が承ります。』
「だーれだ!」
『むむ!その声はおきぬ殿だな!』
電話口の声はたちまち明るくなった。
「久しぶりー!元気してたぁ!」

『もちろん!おきぬこそ元気してた?』


二人は雑談に盛り上がる。

「また始まった」

葛西は肩をすくめる…。
「支部長、今回はどれぐらいいくかな」
隣に座る事務員の山岡紀子はひそひそと耳打ちする。

「俺、三時間。」

「私は二時間半。」


「よおし、んじゃあ賭けに負けた方は今度おごりな。」
「オッケー。」



電話を始めて一時間…。




「うん。そうなのよぉ!そんでさぁ…」
どこから話題が出るのか、おきぬはとにかく話しまくる。


山岡は夕飯のうどんを作り出した。
葛西はインターネットのゲームで遊んでいる。



電話を始めて二時間。


既に10時を過ぎた。

「あははは!まじでー!だめじゃん!」


山岡はうどんを食べ終わり、洗い物をしている。
葛西は事務処理を終え、お笑い番組をみはじめた。



電話を始めて三時間。



時刻は11時を過ぎた。


「大変だよね~。お互いさー。それでね…」


山岡はつぶやいた。

「あー、参ったなぁ。終電なくなっちゃう。」


「いいよ。俺送っていくから。それより賭けに勝ったな。うは!」

「仕方ないなぁ。」
山岡は笑った。



時刻は11時半。


「それじゃあねー!ばいばーぃ!」


おきぬはようやく受話器を電話に置いた。



何やらジメっとした視線を感じた。

葛西と山岡がおきぬをジトーッと見つめていた。


「あ、あれ?あんたたちまだいたの?」


おきぬはきょとんと二人を見つめる。


「支部長電話長すぎですよ…。」
紀子は苦笑していた。


「タダじゃないんだから。無駄な経費は減らしましょうにー。」

葛西は笑った。


「ご、ごめーん」


おきぬは肩をすくめた。



「ところで支部長、用件はなんだったんですか?」

紀子はおきぬに聞いた。



「用件?
……あ、そういえば聞くの忘れてたわ…」



二人はそれを聞くと同時にずっこけた…。