その時、おしんは途端に顔をしかめた。


「熱い…。うぐ…。あ、あああ。」


彼女がもがき苦しみ出す。顔が真っ赤に紅潮する。

(………え?)




おきぬは混乱した。

「ちょっとお姉…、おねえ、どうしたの!ねぇ、ねえ!しっかりしてよ!」


「血を…。血ヲ。」




「な、なによ!何を言ってるの!」


「血をよこセ。
ホシインだ…。血がほしインダ………」




その時、おしんの目付きが変わった。
それは彼女の顔ではない。…まるで別人だった。

老人のように顔はしわくちゃになり、彼女の瞳は黒く塗りつぶされ、中央の眼光がギラギラ輝いていた。


「チヲヨコセ!」


突然おしんはおきぬに掴みかかってきた。


「な、や、やめ、やめて!やめてよ!」


おきぬはおしんを引き剥がそうとした。



よだれをたらし、牙を向いておきぬの肩に咬みつこうとした…その瞬間。


突如おしんの顔に戻った…。




…ドサッ。
彼女は倒れた…。




おきぬは目を見開いた。



「こ、これは、これは一体…。」


その時、サラとジョンの会話が頭をよぎった。
炎の中僅かに聞こえた、二人の会話。

……………
………




「どうだったい?久々の女の味は」

「けっ…。猿をヤったとこで何も楽しかねーよ」



まさか…。
先程の治療の時には肩につくはずの二つの牙の斑点は気付かなかった。

……………。

おきぬは恐る恐るおしんの下着を捲った。


下半身から太股にかけてどす黒い血の流れた跡が続いていた。



………おきぬは言葉を失った。