…その時一つのシルエットが炎の中で動いた。


「…なんだ?」
ジョンは目を凝らした。


炎が一部、避けるように巻き上がっている。

やがてそれは姿を現した。






…おきぬだった。






おきぬが炎の中から一人を肩から抱き、もう一人をおぶさってゆっくり歩いてきた…。



体周りには雪の膜がはっている。




「…はん。あの小娘、生きてたんだね。奴等と一緒に冥土に連れてってやろうと思ったのにさ…」

サラはニヤリと笑い舌なめずりした。


「小娘が…。」

ジョンは刻みたばこを噛みながらつぶやいた。




おきぬは、二人を優しく地面に寝かせた。




ジョンはおきぬに言葉をかけた。



「バカな野郎だ。あのまま寝てりゃ楽になってたんだぜ。また痛い目に」
「好子ちゃん、健太郎くん…」

ジョンの言葉を無視しておきぬはつぶやいた。


「あ?」


「好子ちゃんと健太郎くんは…あの子達は…」



「あ、あのガキどもね。あそこで死んでるよ。ははは!」

トムはつり上がった目を大きく見開き歯を剥き出しにして笑った。


炎の灯りの中、遠く、小さな子供が手を繋いだまま道に横たわっていた…。




「ぼくのお香と封印はすごいんだよ。みんな殺しちゃうんだ!すごいでしょ!あはははは!」



おきぬは二人の子供たちを見つめていた…。


…頬をつたって涙が地面にこぼれ落ちた。

「ひどい…あんな小さい子たちまで…ひどい、ひどいよ…」



おきぬの啜り泣く声を聞きサラは嘲笑した。

「安心しな。すぐにあんたも奴らのとこに連れてってやるさ。」


「ぼくたちに勝てるやつなんていないもんね~」

トムは得意気に話す。


「てめえもとっとと引導を渡してやるからよ、かかってこいや。」

輪をかけるようにジョンはおきぬを挑発した。



おきぬは涙を拭う。
トミの見開いたままの目を伏せさせると、ゆっくりと立ち上がった……。