雪女~おきぬの昔ばなし~




既に外は薄暗くなり、ヒグラシに変わり秋の虫が
辺りを奏でている。


先ほどまで見えていた影も見えなくなっていた。


手を繋ぎながら三人は歩く。



「ねえねえ、おきぬお姉ちゃんは東京見物来るの~。」



首をかしげながら好子はおきぬに聞いた。


「うん。あたしも行くよ。ねっ、楽しみだね!」
おきぬは二人を見つめ嬉しそうに笑った。

「ホントに?やったぁ!」


健太郎は手をふって喜ぶ。

その時である。
突然虫の音がやんだ。


(何?)

周りを見渡すが特に変化はない。
いや、そう見えた。
…何か黄色いオーラのようなものが辺りを包んでいる。
おきぬは立ち止まった。

「どーしたの。おきぬお姉ちゃん。」

辺りを見回すも黄色い「モノ」は姿を消していた。

…気のせいか?

だが虫の音は相変わらず聞こえない。

一体、これは…。


「なんか。なんかがおかしい…。なんだろう。」

すると何やら甘い香りが漂ってきた。


(こ、これは…。結界?
それにこのにおい………


ま、まさか!!)



「好子ちゃん!健太郎くん!走って!」

おきぬは二人の手をギュッと繋ぎとめた。


「え、なになに?」


「いいから来た道を戻るのよ!」
おきぬは叫び、二人を連れて後ろを向いた。


ドン!


彼女が振り返るとなにかがぶつかった。



「な、なに!?」

黒い大木が建っているように見えた。


「へっ…。二匹も猿がいるとは思わなかったぜ…。」





その時、とてつもない衝撃がおきぬの下顎に走り、突き上げられたと同時に脳天にも…。


周囲が真っ赤に染まった気がした。







だが、それも一瞬だった。



たちまちおきぬの意識は暗闇に突き落とされた…。